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正しい知識で公務職場における「ハラスメント根絶」を目指す

弁護士も執筆協力者として発行された最新の地方公務員向けハラスメント防止に関する本に、次の様な記述があるので、念のため注意を喚起させて頂きます。(自治体職場からハラスメントを根絶するため)

・マタハラ(パタハラ)
育児介護休業法第61条(公務員の特例)第36項にマタハラ(パタハラ)防止規定が置かれている。(残念ながら当該本では、そのことは一切触れられず、同法第25条が地方公務員に適用されない旨の記述があるのみ)

・パワハラ
パワハラ についても(総務省の技術的助言を無視しない限り)自治体は、人事院規則に準ずる内容の条例等規定を定めているが、一切そのことが言及されていない。(セクハラ についてだけ言及されているため、逆にパワハラ は人事院規則と無関係と読めてしまう。)

・指針
総務省の技術的助言においては、人事院規則、通達が示す指針も参考とする様、必ず示されているが、厚労省の指針のみ紹介されている。

・施行日
(ある意味致命的問題だが)、セクハラ 、マタハラについて、雇用機会均等法、育児介護休業法の直近の一部改正法の施行日を単に施行日と記述しているため、地方公務員のハラスメント関係法規全ての施行日が令和2年6月1日となっている。(勿論、セクハラ 、マタハラ(パタハラ)は、パワハラ の法定化以前から法定化されている)

自治体職員のハラスメント関係法規は、総務省の技術的助言もあり、同じ公務員である国家公務員に適用されるハラスメント関係法規を踏まえ、これまで逐次整備され、民間よりも厳しい内容となっています。(例えば、令和3年12月1日の総務省の技術的助言により、人事院規則10ー15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント防止等)の改正を踏まえた対応が求められ、ハラスメントの対象に「不妊治療を受けることに関する言動により職員の勤務環境が害されるとき」が追加される等規定が整備された。)


これまで、各自治体人事担当者の尽力によって民間企業よりも充実した規定が整備されて来たにもかかわらず、そのことに十分言及せず、自治体職員のハラスメントルールは原則民間と同じであるという様な印象を与えかねない内容を自治体職員に発信されているのは、残念と言わざるを得ません。
ハラスメントの無い公務職場実現の為には、「公務職場のハラスメント防止ルールは民間より格段に厳しい」ということを正しく認識しておく必要があると信じ、(批判覚悟で)敢えて発信させて頂きます。

その他にも、公務員のハラスメントの民事責任には、加害職員の「不法行為による損害賠償責任」の他、「雇用主の安全配慮義務違反(債務不履行)」がありますが、当該本には後者について言及がありません。しかし、職場からハラスメントを無くすには、管理監督職員に対して、「自分が直接の加害者でなくとも安全配慮義務違反が問われる可能性があること」を周知徹底しておくことが求められます。
また、不法行為の損害賠償は国家賠償法の規定により、「職員個人ではなく地方自治体が賠償し、加害職員個人には『故意又は重過失』がある場合のみ求償される」との解説があります。これまでの判例の限りではその通りですが、公務員個人責任論を唱える学説もあり(つまり解釈であって、規定上そうなっているというのは言い過ぎ)、また同時に懲戒処分のことにも言及しないとミスリードの恐れがあります。(過失の場合でも当然厳しい懲戒処分の可能性がある。)

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